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葛原守《自由作曲(オーボー独奏曲)》

葛原安子氏所蔵

葛原はオーボエとピアノのための作品を2曲書いている。本人が戦後に見直すことがあったらいずれか一方が廃棄されたかもしれないのだが、注目されるのは2曲とも同じモチーフを使用していることである。モチーフとは歌曲《かなしひものよ》で歌われる旋律である。一般的な解釈では、まず歌曲《かなしひものよ》が書かれ、そこから二つのオーボエ独奏曲が生まれた、ということになろう。2曲いずれにも「本科二年」と書かれ、さほど時を措かず作曲されたものと見られる。葛原は《かなしひものよ》をオーボエに歌わせ、歌詞に託された心情を内在化し、室内楽としての可能性に挑戦したのであろう。

表紙に「[自由作曲(オーボー独奏曲)]本科二年 葛原守」と記される。インクで書かれた譜面に、鉛筆書きの修正や加筆が見られる。鉛筆書きの全てが教師のものかどうか断定はできないが、ほとんどが教師によると見られる。最後に橋本の認印が押されている。演奏に際し、修正や加筆が施された部分については、修正後を基本とする。「ゆっくりと(♩=46)」、変ロ長調、四分の四拍子。ピアノ前奏は冒頭のピアニシモにデクレッシェンドが鉛筆で加えられ、静かな始まりとなる。オーボエとピアノが《かなしひものよ》の旋律断片を呼び交わす。

譜面の始めの方に、鉛筆書きで「リズム(変へる)」という言葉と、付点と逆付点の音符が書かれ、実際、作品には両方が使用されている。14小節目から現れる、流れるような旋律は《かなしひものよ》にも使われた旋律である。36小節より四分の二拍子「快活に(♩=112)」となり、この作品で最も活気ある箇所にさしかかる。この作品の最強音メゾフォルテが記されるのはここだけで、旋律の断片が変奏され、ついで46小節から変奏が変ト長調に引き継がれ、繰り返しをはさんでト長調を経過し、再び変ロ長調の流れるような旋律でテンポも戻って終結する。

もう一つのオーボエ作品は、他の曲や和声課題とともにノートに書かれている。この作品を含むノートも公開される予定である。

 

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(クレジット: 東京藝術大学 音楽学部大学史史料室)
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